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映画「スラムドッグ$ミリオネア」追記


「Slumdog Millionaire」を観ました。「ベンジャミン・バトン」をおさえてゴールデン・グローブ賞作品賞を獲得、なんとオスカーにもノミネートされている、話題の映画です。

この映画、ボリウッドではないのですが、私の目にはボリウッドに見えました。
…などと言うのは、きっと乱暴に過ぎる…とは思うのですが、
「UKのスマートさの中にボリウッドを取り入れた」
というよりは、
「ボリウッドにUKのスマートさを取り入れた」
と言った方が近いように思えたのです。
多少否定的なニュアンスも隠さずに言い直すなら、
「ボリウッドを、UKのスマートさでもってきれいにまとめた」
という感じ。
そう、少し、無難すぎるきらいはあるのです。
ミリオネアの司会者役には、キャラクターの強いリアル司会者2人(作中前半で出てくるアミターブ・バッチャン含む)ではなくAnil Kapoorを起用。
ダンスシーンのダンスそのものは、ボリウッドを見慣れていると「あれ?」と拍子抜けするかもしれない、シンプルで庶民的な振り付け。
高い評価を得ている音楽ですが、ボリウッド音楽を聴きなれた人の耳には、特別なものには聞こえないのではないかと思います。「Jai Ho」はやっぱり素晴らしいけれど、「A.R.Rahmanとしては」、いつも通りの出来。(これがいまさら世界的な映画賞の音楽賞を総なめにするならば、これまで一体いくつのインドのアルバムがもっと評価されていなければならなかったのか、かえって悔しい思いです)
ですが、映画のバランスを保つためには、そのどれもが必要なことだったのだろうと理解できます。
たとえばもし、悪役をいかにも悪役としてくどくど描かれていたら、「洗練されてきたボリウッドをなめているのか」と怒りも買いそうですが、そのようなこともなく、
ムンバイのスラムの描き方は、どこをとっても文句のつけようのないリアリティ溢れるものでした。
宗教紛争の話を、「社会問題」としてでなくひたすら「個人の視点」からだけとらえたような映像で通したところも、好印象でした。あのムンバイでの惨劇に関して説明がなされなかったことで、監督の立ち位置がなんとなく理解でき、そのあとのストーリーが見やすくなりました。
あるクイズ問題の正解や、タージ・マハールのシーンの一部など、現実に反するのではないかと思われる描写をしているところもありましたが、映画の邪魔にはなりません。

日本では「スラムドッグ$ミリオネア」のタイトルで4月公開。
必見です。

ゴールデングローブ賞・英アカデミー賞に続いて本命のアカデミー賞オスカー獲得の知らせを受けて、追記です。

私の周辺のデリー(オールドデリー/ニューデリー双方)の人々は、「スラムドッグ・ミリオネア?…ああ、上映してるやつね」くらいのさめた反応でした。
オスカーを獲得した云々については、それとは全く違う話題に混ぜ込んでみたりしているのを耳にしましたが、やっぱりそれだけ。

では、評論家受けはどうなんだろう?と思い、
とりあえずは「TimeOut」誌の映画評をチェックしてみました。
2号分まとめて列挙します。さあ、スラムドッグ$ミリオネアはどこに?

(星6つが満点)
Billu ★★
The Pink Panther 2 ★★
Revolutionary Road ★★★
The Stoneman Murders ★★
Valkyrie ★★★
Chal Chala Chal ★
The Curious Case of Benjamin Button ★★★★
Dev.D ★★★+1/2
Luck By Chance ★★★★
Outlander ★★
I'm Not There ★★★★★
Slumdog Millionaire ★★★
Seven Pounds ★★
Marley & Me ★★★
Bedtime Stories ★★
Chandni Chowk to China ★★
Victory ★★
Raaz-the mystery continues ★★

★3つ。埋もれてしまっています。

別の映画になりますが、もうひとつ日本公開が決まったChandni Chowk to Chinaは★2つだったようです。
映画に詳しい方が、
「CCTCが日本公開されても、また日本人がインド映画を馬鹿にするだけだ」
と懸念なさっていましたが、
さて、どうなるか。

スラムドッグ$ミリオネアの話に戻りましょう。
今回はまだ忙しく、「DELHI-6」しか観ることができていませんが、
奇しくも、音楽が、スラムドッグ$ミリオネアと同じA.R.Rahman。
A.R.Rahmanは、アカデミー賞の作曲賞をはじめ、数々の音楽賞をスラムドッグ$ミリオネアで獲ってしまいましたが、
音楽は、「DELHI-6」の圧勝だと思います。
胸中、いささか複雑です…。映画賞の作曲賞が、映画とセットで論じられるものである以上、仕方ないというのもわかるのですが。

映画全体としてみても、私は「DELHI-6」を評価したいのですが、
足し算の論理でなく、引いて引いて…完成度を高め…という観点からすれば、
やはり、スラムドッグ$ミリオネアのほうが「巧い」。
「DELHI-6」は、細かいところは皮肉がきいていて、モンキーマンを持ち出してくるところもおおっと思わせたのですが、
結局、大上段に構えた演説シーンを入れてしまう。まとめようとしてしまう。
そういう意味では、作品賞を他のボリウッドでなくスラムドッグ$ミリオネアが獲得するのは自然な流れなのでしょう。

あとは、日本で公開されたときに、スラムドッグ$ミリオネアがどういった位置づけになるのかが気になります。

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コメント

今、もうインドにいらっしゃるの?

ちょっと前の西日本新聞でも記事になっていましたよ。
インドの暗いスラムが強調されてインドへの偏見を呼び戻すのではーと思っていましたが、
いい映画のようですね。
安心。4月が楽しみです。

  • mrsguccie
  • 2009/02/04 21:08

現在地福岡、デリー戻りは下旬からです。

「偏見を助長する←OR→新しいインドを伝える」
この文脈は、インドにかかわっていると、やっぱり気になりますよね。私もそうです。ここ5年ほどは特に「インドの変化をもっと伝えたい」「イメージを変えたい」という動きが活発だったと思います。

ですが、この映画は、そういった文脈とは無関係に存在している作品だと思えました。

スラムが舞台の映画であり、スラム育ちの青年たち&スラム育ちの女の子が主役の映画ですから、スラムの話が多いというのはその通りですが、
「暗く悲惨でかわいそうなスラム」あるいは「必死に生き抜いていて大変だけどやっぱりかわいそうなスラム」といった切り口でもありませんし、
かといって、冷徹な視線を向けているというわけでもありません。
安易に冷酷にならず、安易に泣きを入れず、安易に同情的にならず、安易に社会問題に結びつけず、
スラム育ちの青年から視点を外すことなしに、よりにもよってラブストーリーとして完成させてしまったところは、間違いなく評価に値すると思います。

そして残念ながら、一つの完成された「映画」としてみたときに、ボリウッドが…私の大好きな「Om Shanti Om」が、「Devdas」が、「Taare Zameen Par」が、この作品に今一歩及んでいないことも確かであるように思いました。インパクトはボリウッドの圧勝、ダンスはボリウッドの圧勝、音楽も演技も全体として負けていないにもかかわらず、です。

もう一度、「必見です。」

私もインドで観たのですが、やはりいい映画だとは思うのですが、手放しにすばらしい!と拍手喝さいできない部分が残るのは否めませんでした。。。

それがなんなのかうまく表現できなかったのですが、水洗さんのお話の中に、少しそれを見つけられたような気もします。

まわりが「すばらしい、すばらしい」と絶賛する中、ちょっと居心地が悪いです、、、(笑)

ともあれ、誰が見てもわかりやすく、いい映画でしょうね。

  • sameera hindustani
  • 2009/02/05 01:29

hindustaniさま
コメントありがとうございます。
Sさんですよね?ブログ読ませていただきました!
「映画」としてはいいのかも、というSさんの表現、言い当てていると思います。ボリウッドを見慣れている目で見ると、小さくまとまりすぎているような感じがするかも…(本文中では「少し無難?」と表現しました)。

原作関連:
私は、原作からかけ離れた出来上がりになっていればいるほど、推敲され消化され新たな太い糸で紡ぎ直されていてよかよか♪と感じる癖がついてしまっているので(その癖はその癖で曲者ですけども^^;)、そういった意味でも星1つアップしちゃっているのですが、そこはSさんと逆ですね〜。
でも、原作への思い入れやイメージがあるときの苦しいかんじ、よくわかります。

英語関連:
「彼女」の電話でのあのセリフ(ヒンディー)に、英語字幕がついていなかったのが不思議です。例の彼だけが神について口にしている、ということになってしまったのでは、映画にラブストーリー以外の余計な深い意味がいきなりついてしまいません?せっかく、ほかの強烈すぎるたくさんの要素をコントロールしてバランスをとって、「ラブストーリー」という太い糸でざっくりと編みなおした甲斐もなくなってしまうと思うのですが、私の読みが甘いのでしょうか。それとも単なるミス?

  • 水洗
  • 2009/02/05 02:45

あ、失礼しました!sameeraが消えてましたね。(笑)そうです、sです!!

そうですね、私はあまり原作を読んで引き込まれてから映画を観るという経験がなかったので、甘い感想だったのだと思います。

比較するということにも、何もアイデアがありませんでしたし、こだわりも何もなかったので。。。

でも、原作を抜いても、はやりインドに強い方々の感想を拝見しても、やはり何かが弱い、小さいという感じは私も残るのです。

だから、私にとってはどうしても「インド映画の大きさ」を思い知る機会といいますか、それを感じずにはいられません。

アミターブジが出しているインド映画の世界的位置づけについてのコメントには大きくうなづけます。

そしてストーリーについてですが、水洗さんがおっしゃるとおり、やはりあの英語字幕無しには疑問が残りますよね。
あの一言から先に起こる出来事こそが感動の要素といいますか、、、

いずれにしても、私も1からもう1度見直したいです。今度はヒンディの方でも見ようかな?

メッセージもありがとうございます。
意見を述べるって本当に大変なことですね(笑)

  • sameera hindustani
  • 2009/02/05 13:52

さすがに、受賞前に紹介したSUNDAR水洗さんの映画眼のすばらしさ、この映画のことは、さまざまなマスコミでその後知ることになります。一昨日3月4日でしたか、BS1の午後5時15分ごろから、「アジアクロスロード」で、この映画の紹介と監督とのインタビュー番組がありました。
監督はそれまでのインドはあまり知らず、最近ムンバイのスラムを知り、この映画製作を思い立ったそうですね。そういう意味で、監督の新鮮な感動からこの映画ができたのであって、スラムを美化しすぎているとかいうさまざまな批判は、そのようなところから来ているのではないでしょうか。
監督は、インドのすばらしさに目ざめ、もう一度ムンバイの映画を作りたいと結びました。今後が楽しみですね。

  • 随念院
  • 2009/03/06 11:32

え〜!日本のテレビで、そんなインタビュー番組があったんですね〜!!
「最近ムンバイのスラムを知り」…なるほど。歌「O... Saya」の部分の映像が撮りたかったのかな。確かにあそこの映像は良かったです。
その後もデリーの人たちに映画の感想を聞いたりしていましたが、たとえばこんな反応。

A「観てないし、観る気もない。あんなのはヒットしない」
私「オスカー獲得したことは?」
A「ヒットしない映画には、かわいそうだから賞をやるのさ(笑)」
B「俺、観たよ」
私「どうだった」
B「not bad、not good」
私「あれはインド映画だと思う?」
B「うーん、まあ」
A「(Bに)何言ってんだ。あれはイギリス映画だぞ」
B「いや、イギリス映画として出たけど、実質、スタッフもキャストも音楽もインド人だしさ」
A「監督がイギリス人じゃないか。映画の舞台がムンバイだってだけだ。インド映画であるわけがない」
C「ま、あれだ、ジェームス・ボンドみたいなもんだ」

私自身は、「Slumdog Millionaire」に続いて「Delhi 6」と「Dev D」を観ました。
「Slumdog〜」は90年代のムンバイのスラムを、「Delhi 6」は現代のオールドデリーを、「Dev D」は現代のデリーを、それぞれリアルに描写できている映画だと思いますが、

私の好みは、「Dev D」>「Delhi 6」=「Slumdog Millionaire」。
完成度的なところを言えば、「Dev D」=「Slumdog〜」>「Delhi 6」。
音楽については、私の好みは「Delhi 6」=「Dev D」>「Slumdog〜」。

総合的に、「Dev D」のほうが「Slumdog〜」よりずっとリアルで、ずっと面白いと感じました。

といって、「Slumdog〜」が駄作ということではありません。3作品ともかなり良い映画だと思います。

  • SUNDAR 水洗
  • 2009/03/06 15:13

インドの人たちの反応、面白いですね。賞を与えたアメリカの眼と、それを見たインド人の眼、大変興味深く思いました。それに比べて、日本の「おくりびと」は、日本でも大変な人気ですね。
あとの映画のこと、さっぱりわからず、申し訳ありません。

  • 随念院
  • 2009/03/06 18:10